小説第5章 リオレウスの脅威あれから一週間…学校は閉鎖され、あの事件は世界中に知れ渡った。 しかし、モンスターの残骸は消えて無くなり、犠牲になった人のみが残った… そして陽達は一時期、国に保護される事になった。 保護と言っても寮のような所で、心地良いとは言えなかった。 姫はその後、カウンセリングを少し受けて、乱れていた心を少し落ち着かせた。 陽の励ましと周りの仲間の助けがあったため、早く落ち着いたのは良かった。 しかし、毎日来るテレビ局の取材者や警察の事情聴取で暗くなっていた。 「ったく!他人事だと思ってバンバン聞いて来やがって!」 康二が壁を叩いた。 人数分の机と布団のみが支給された部屋は9人分の布団がギリギリ位のサイズで姫も同じ部屋だった。 「本当だよ!外出て遊びてーし…」と山崎。 「麗華ちゃん…」小野は既に禁断症状が出始め、ガクガクしていた。 ガチャ… 「君達の保護はこれまでだ。御協力に感謝する。」 ドアを開けて毛深い大男が入って来た。 「よっしゃ~!やっと出られるよ…」陽が伸びをした。 全員外で別れ、それぞれの家を目指した。 彼等は、それからしばらく学校を休んでも良いと指示され、ほとんどが休んで居た。 そして、2日が過ぎた・・・ 陽は、姫に呼び出され、学校から少し離れた小さな公園に来た。 「陽、あの…人工モンスターの事…どうする?」 姫は皆が帰る中、陽を読んで話し掛けた。 「今回は作り物じゃ無かったみたいだけどな…もう、訳わかんねーよ…」 「私、パパに聞いてみるね。」 「俺も着いてくよ。」 「ありがと。…じゃあ行こ!」 姫はクルっと回って歩き始めた。陽もその後に続いた。 「姫、姫はMHどこまで行ってるの?そういや聞いたこと無かったよね。」 「?私?私は今リオレウスだけど。」 「マジかよ!さすがMH作った奴の娘なだけあるな!」 「…私、中一からやってたし。でもリオレウスは強いから…」 「へー…しばらくMHやってないから腕鈍っちゃったかも~!」 ブンブンと陽は腕を回すと、姫はそれを見てクスクス笑った。 名前が姫なだけあって、行動も上品な所があった。 そして30分後… 巨大ビルの目の前に二人は来た。 ビルを囲う木々に身を潜め、入口を見た。 黒いスーツを着た体格の良い男が3人、姿勢を正して立っていた。 「陽、わかる?あそこの穴。あの穴が待ち合い室の女性用トイレに繋がってるの。でもフロントの人しか使わないから大丈夫。」 「わかった。で、どうやってその穴に?」 「…何かで気が逸れれば…」 「!!…わかった!」 陽は姫の耳にヒソヒソと言った。 「本当にそれで入るの?私は嫌よ!」 「そうかな~…じゃあ…」 ヒソヒソ… ドッカァアーン! 「事故だ~!」 「誰か救急車呼んで!」 ビルの前で車がぶつかって火を噴いていた。 3人の男も事故に集中している。 姫と陽は顔を合わせて笑った。 二人は男の死角から穴に飛び込んだ。 本当は通気孔であろう穴は体ギリギリだったが中は何とか高さだけはあった。 「あ、やだ!私スカート!」 姫は尻を抑えた。 「わっ、め、目閉じてるから進め!」 「どうせ少し開けて見る気でしょ!先行ってよ!」 「誰がお前のなんか見るんだよ!大体入れ代わるの無理だろ!」 「陽のバカ~!覗き~!あの時だって…」 「な、あの時は…その…い、良いから進めよ!」 「もぉ~!絶対見ないでよ!」 二人は狭い穴をゆっくり進んだ。 「ふー…脱出ぅ~!」 姫は腕を伸ばした。 「疲れたー…ありえねーよったく…」 「陽、何色?」 「水色だろ…って、あ!」 「変態~!」 ッパーン!! こうして陽の頬に真っ赤な紅葉が出来た… 「パパが居るのは最上階の72階。今は1階…エレベーターで行くのは無理だよね…」 「いひゃ、エヘヘーハーでいほう!」 腫れた頬を抑え、陽が言った。 「良いけどどうやって?」 「まあ着いて来いよ!」 「良いけど治るの早いね…」(頬の腫れ…) チーン… エレベーターが止まって何人か人が乗った。 「今だ!」 陽は姫の手を取り走った。 「ちょっともう閉まってるよ!」 「そんで良いんだっよ!」 エレベーターのドアを無理矢理開けて、エレベーターのコードに跳び移った。 「さあ、姫!跳んで!」 陽は手を伸ばした。 「え?無理…」 「無理じゃ無い!受け止めるから!」 姫は床を蹴った。 陽にしっかりしがみついた。 「恐い…」 陽の服に顔を押し付けた。 「大丈夫!下は見るなよ…」 チーン… 「よし!降りて。」 陽は姫を降ろし、再びドアを開けて外に出た。 32階…特に変哲も無いフロアだった。 「さっきはありがと!私、高い所苦手でね…あ、ここからは緊急用の階段で上がれるよ!」 姫は小走りで走った。 「あ、ちょっと待てよ!」 陽も小走りで追い掛けた。 「はぁ…はぁ…陽、ちょっと休も!」 姫は階段に倒れ込んだ。 「確かに…はぁ…はぁ…72階までまだ13階もあるからな…少し休むか…」 陽は姫の隣に座った。階段のホールに二人の荒い息が響いた。 「ここまでか…71階。この上なのに…」 陽は緊急階段からでるドアの前で止まった。 「まあ入ろ!ね!」 姫はゆっくりドアを開いた。 「―――!!」 二人は大きく目を開いた。 液体の入った大きなカプセルの中にモンスターが入っている。 そのカプセルが沢山並んでいた。 「これが…人工モンスター…」 陽が口をあんぐり開けて呟いた。 「止めさせなきゃ!」 姫が奥へと走った。 「おい!先行くな!」 陽も奥へ向かった。 長い通路になっていて、両脇にあるカプセルの緑色の液体がブクブクと泡をたてていた。 しばらく進むと広いホールが見えた。 そこには中央に一際巨大なカプセルがあり、中には赤い刺状の鱗を持った雄火竜…リオレウスが丸まっていた。 姫はホールヘ出る所で立ち止まっていた。 「姫っ!」 陽が横に並ぶ。 近くに来るとよりリオレウスの大きさがわかった。 カツ、カツと靴の音がホールに響いた。 「これは私の努力の結晶だ!今こそ解き放つ時が来た!これで…これで…」 「パパ!」 姫が飛び出した。 「姫!なぜお前がココに?」 「この実験を止めて!パパの実験のせいで沢山の人が傷ついてるの!」 姫は父親の服を掴んだ。 「姫、何を言っているんだ!パパはこの実験に命を賭けてやってきたんだぞ!」 「何で分からないの!?このモンスターは沢山の人を殺してるのに!」 「姫、少し黙るんだ!」 ドン! 「きゃっ!」 父親は姫を突き飛ばした。 「姫っ!」 陽が咄嗟に駆け出し、姫を支えた。 「パパの分からず屋!」 「……」 パチン!と父親は指を鳴らした。 するとガラス板のような板が陽達を囲んだ。 「くそっ!このガラスびくともしない…」 陽がガラス板を蹴った。 「当たり前だ。スーパー強化ガラスに薄い鉄が混じってるんだ。人間の力じゃ傷すら付かない。…さあ開放せよ!リオレウス!」 カプセルにヒビが入って少し液体が流れた。 ゆっくりとリオレウスの瞼が開く。 「きゃー!!」 「うわー!!」 リオレウスが翼を広げると強風が巻き起こり、特殊なガラスもろ とも吹き飛ばされた。 「素晴らしい!素晴らしいぞリオレウス!さあ、外に出てその力を試すんだ!この世界にもう用は無い!姫を連れて行くぞ!ワー!ッハッハッハッハ!」 リオレウスは頭を下げて頭に姫の父親を乗せた。 そして赤く巨大な翼を羽ばたかせ、浮き上がった。 「来るっ!陽!逃げて!」 陽を突き飛ばして姫は胸に手を当てて目を閉じた。 リオレウスの口から炎が漏れ出した。 ズゥッ…ドォーン!ドォーン! 巨大な火炎弾が二発、空気を焼いて飛んで来た。 「姫!!!」 陽が前に出ようとした。 {間に合わない!} 「陽、私信じてるから…あの時の約束…」 「…風の障壁!」 輝きがいつにも増して強かった。 火炎弾が姫の前に来た時、薄い瑠璃色の壁が姫の前に出来た。 ジュドォオーン!! 半円の形の障壁は火炎弾に飲み込まれた。 ジューっと障壁が焼ける音がした。 「ぅぅ…がはぁっ!」 姫は胸に手を当てたまま膝を床に落とした。 そして口から血が流れた。 ジュドォオーン!! 二発目が障壁を襲った。 「きゃあああー!!!」 障壁を完全に飲み込み、姫が炎に包まれた。 「姫!!」 陽が立ち上がって姫に駆け寄ろうとしたが炎がそれを遮った。 「くそっ!」 「陽とか言ったな…お前は残念だ。姫に関わらなければこんな不幸にならなかったものを…」 「姫に会ったのが不幸だと…?」 ブチブチと陽の頭で何かが切れる音がした。 「そうだ。姫は疫病神なんだよ!」 パチンと指を鳴らした。 リオレウスは両足を腹の前に持って行き少し羽ばたいた。 「取り消せ…今言った事、取り消せ!!!」 陽は瑠璃の鱗を握って炎の中に突っ込んで姫の前に立った。 瑠璃の鱗は剣に形を変えていた。 「邪魔だ!」 リオレウスは足を前に突き出した状態で空中から滑降した。 「姫はお前なんかに渡さない!!」 大剣を後に引いて力を入れた。 「うぉおおおおお!!!!」 襲い掛かるリオレウスの巨大な足をくぐり抜け、思い切り大剣を振り上げた。 リオレウスの足に瑠璃の大剣が刺さって大量の血が吹き出した。 「何?!小癪な!!」 リオレウスの足はそのまま陽を蹴り飛ばし、姫を捕らえた。 陽は長い廊下を滑るように吹き飛ばされた。25メートル以上吹き飛ばされ、やっと勢いが弱まった。 「姫ー!!!!」 力一杯叫んだが、その声はリオレウスの咆哮に打ち消された。 そしてリオレウスは壁を突き破り飛んで行った。 「くっそぉおおおお!!!!」 陽は拳で床を殴った。 拳は皮が破け、血が滲み出た。陽は号泣して床を殴り続けた… 「俺、強くなるから!絶対に!…どんな事があっても姫を守るために!絶対!絶対!!!」 陽は立ち上がって緊急階段に行った。 下の方から人の声が伝わって来た。陽はゆっくりと階段を下りた。 「君!何やってたんだ!?」 リオレウスの返り血が陽の服を汚していた為、腕を掴まれた。 「姫を守る…絶対に…」 陽は掴まれた腕で振り払い走り出した。 20段近くある階段を一気に飛んで、どんどん駆け降りた。 上から何人か追って来たが陽のスピードに追いつけなかった。 「?!」 陽も自分で信じられないスピードだと思っていたのに一人着いて来る者が居た。 陽が階段を飛んで着地した瞬間、その者は長い手で陽の首根っこを掴んだ。 そして陽の体を持ち上げた。 「君かい?上をグチャグチャにしたんは?」 関西ッぽい口調でその男は話し掛けてきた。 「ちょっちキナはれ…」 身長は190近かったが人差し指と親指だけで陽を持ち上げていた。 丸く小さい眼鏡はダテで、左目にはアニメチックな縫った後の傷がおそらく油性ペンで書かれていた。 フロアに入るとある部屋に連れていかれた。 「アンちゃん今まであった事話してくだされや。おっと自己紹介まだやったな!イカンイカン!わいは近藤武蔵!ギャグみたいやろ?まあこんなんやけど一応20やから!アンちゃんは?」 「…」 「アンちゃん暗いな~。昔の姫ちゃんみたいやわ!今は明るくなって来たけどな!それよりあの胸!成長ってのは~」 「姫の事知ってるのか?!」 陽は近藤に近づいた。 「知ってるも何も、姫ちゃんの事は姫ちゃんよりしってるっちゅー話!」 「本当か?!」 「嘘言ってどーすんねん!何や?姫ちゃんの3サイズでも知りたいん?教えたるよ~!上から…」 「そんなのは良い!姫の親父の狙いは何だ?何故姫をさらった!」 陽は近藤の胸倉を掴んで言った。 「知りたい癖に~!残念やけどワイは心読めんねん!アンちゃんの言いたい事は手に取るようによう分かる!でもな、今行った所でワイが創ったリオレウスには勝てへんよ!」 陽が口を開こうとした。 「おっとストップ!言いたい事は分かるって言ったやろ!ワイがあのリオレウスを創った理由は特に無いけどな、ワイはあの姫ちゃんのこれからの成長ぶりにはゴッツ気になるねん!だからアンちゃんに姫ちゃんを救出できる位の力を付けたる!まあ今は焦らない事!わかったらハイ!」 「…はい。」 「ほな、話の間ずっと気になってた姫の3サイズ教えたる!」 ヒソヒソ… 「そ、そんなに!」 「いや、まだまだ成長するとワイはみた!他にもココで働く美人のネーちゃんのも何でも知ってるで!もちろん!姫ちゃんの入浴映像も!」 ニヤニヤとした近藤顔と眼鏡が反射して輝くタイミングが調度合わさった。 そして一旦、陽は家に帰され、この件は近藤が近所のガキを連れて来たと言う適当な言い訳で終わった。 長い一日が終わり陽は朝早く家を出た。 乗りなれた自転車に又借り、ビルに向かって走った。キィーッ!ドリフトでビルの前まで来るとまた3人の男が並んで警備をしていた。 「今は8時50分…10分前か…」 陽は木に寄り掛かって待っていた。 それから30分… 「おせーな…ったく…」 それから30分… 「あー来ねー!」 そから40分後… 「おっはよー!いやー14階担当の佐々木美奈ちゃんを見てたら、これまた一つ一つの行動が可愛いねん!夢中になって見てたら我を忘れてな!あ、今俺も見たい~って思ったやろ!」 「馬鹿ヤロ!お、思ってねーよ!」 「良いって!良いって!思春期はそーゆーモンやねん!ほな、行こか!」 近藤は走り出した。 「ほら!下りた下りた!富士山までひとっ走り~!ってな!」 二人はこうして富士山までの長すぎるマラソンが始まった… ・小説置き場へ戻る ・第6章を続けて読む ジャンル別一覧
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